成年後見遺産分割協議は、相続財産を誰に帰属させるかについての法律行為ですので、これが有効に成立するためには、共同相続人の全員が判断能力を有していることが必要になります。

しかしながら、超高齢社会である現在においては、相続が発生した際に、その相続人の中に、認知症等により判断能力がない方がいらっしゃる場合があり、そのままでは有効な遺産分割協議ができないことがままあります。

このような場合に、有効な遺産分割協議を成立させるためには、家庭裁判所に対して、認知症等により判断能力がない方についての成年後見開始の申立てを行って、この方の法定代理人となる成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

すなわち、この選任された成年後見人が、判断能力がない方に代わって、遺産分割協議をはじめとした各種相続手続き(相続登記預貯金の解約など)を進めていくことになります。

成年後見について

成年後見とは、認知症や知的障害、精神障害などが原因で自分の財産を管理したり、契約や遺産分割協議などの法律行為をする能力がない方について、家庭裁判所が、本人・配偶者・四親等内の親族・市町村長等の申立てにより、本人の権利を守るための成年後見人を選任して、これをもって本人を法律的にサポートする制度です。

選任された成年後見人は、家庭裁判所の監督の下で、本人の利益のために、本人に代わって必要な契約等の法律行為をし、財産を管理します。

成年後見手続きの流れ

成年後見手続きの申立てから後見登記までの一般的な手続の流れは、以下のとおりです。なお、この手続きにかかる期間は2か月程度になることが多いです。

■1.申立人、成年後見人の候補者を誰にするかについて検討する

後見開始の申立ては、本人(成年被後見人となるべき者)、配偶者、四親等内の親族などが行うことができます。

成年後見人については、選任されるために必要な特別の資格というものはございませんが、未成年者や破産者などは後見人となることはできません。一般的には、本人の親族や、弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職を後見人候補者とすることが多いです。

▼▼▼

■2.申立てに必要となる書類を準備する

後見開始の申立てには、申立書以外に以下のような書類が必要となります。

(1) 本人の
・戸籍謄本(全部事項証明書)
・住民票または戸籍の附票
・登記されていないことの証明書
・診断書

(2) 後見人候補者の住民票または戸籍の附票

(3) 本人の財産に関する資料等
・不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産税評価証明書)
・通帳のコピー
・保険証券のコピー(裏表全部)
・遺産目録(本人が相続人となる手続きを予定している場合)

(4) 本人の収支についての資料

▼▼▼

■3.後見開始申立書の提出

本人の住所地を管轄する家庭裁判所に提出をします。名古屋家庭裁判所が管轄裁判所となる場合は、申立書の提出の際に、申立人や後見人候補者と面接(受理面接)を行うことから、申立てを行う前に、電話で受理面接の予約をとる必要があります。

後見開始の申立ては、いったん申立てをすると撤回や取下げることが制限され、取下げには裁判所の許可が必要となります。また、審判がされた後は、取下げをすることはできません。

したがって、申立後に、申立人が成年後見人に希望する候補者が選任される見込みがなくなったからといって、申立て取下げることは難しいですので注意が必要です。

▼▼▼

■4.家庭裁判所の審理

本人の判断能力がどのような状況にあるか、後見人を誰にするかについて家庭裁判所で審理します。関係者からの事情聴取や、本人の判断能力についての医師による精神鑑定などが行われます。

▼▼▼

■5.審判

家庭裁判所により成年後見人が選任され、後見が開始されます。後見人に加えて、後見人を監督する成年後見監督人が選任されることもあります。

▼▼▼

■6.審判確定

成年後見人が審判書謄本を受け取った日から2週間が経過すると審判が確定し、これにより後見人の職務が開始されます。

▼▼▼

■7.後見登記

審判確定後、家庭裁判所の嘱託により東京法務局において後見登記がなされ、これにより本人や成年後見人の氏名及び住所、後見開始の審判をした裁判所、審判確定日などの事項が記録されます。

後見開始申立てにかかる費用

名古屋市の関司法書士事務所に、後見開始申立てに関する書類の作成をご依頼いただいた場合にかかる費用は、次のとおりです。

■申立書類作成の司法書士報酬 88,000(税込)

■実費分
・申立手数料 収入印紙 800円分
・後見登記手数料 収入印紙 2600円分
・郵便切手 2922円分(名古屋家庭裁判所に申立ての場合)
・鑑定費用 50,000円程度