昔の抵当権などの抹消登記について
相続した不動産の登記簿を見てみたら、何十年も前に設定された古い担保権(抵当権など)の登記が抹消されずにそのまま残ってしまっていることがあります。このような担保権は、休眠担保権と言われています。
通常、担保権の抹消登記手続きには担保権者の協力が必要となりますが、休眠担保権の場合、担保権者がどこにいるのか分からなくなっている(亡くなっている)ことも多いため、どのように抹消登記をすればよいのかが問題になります。
担保権者やその相続人の行方が分かるかどうか
まず第一に、担保権者(亡くなっている場合は、その相続人)の行方を調査します。所在が分かった場合には、その担保権者や相続人に事情を説明し、登記義務者として抹消登記申請に協力してもらうことになります。
では、登記申請に協力してもらえない場合や、そもそも行方が分からない場合にはどうしたらよいのでしょうか。
手段1:提訴して判決を取る
裁判上で、債務を弁済済みであることや消滅時効などを主張して認められれば、その判決をもって単独で抹消登記申請をすることができます。
この方法は、担保権者から登記申請の協力を得られない場合でも、担保権者が行方不明の場合でも利用できます。
ただし、裁判には少なくとも数カ月単位の時間が必要となりますので、その旨留意しておく必要があります。
手段2:弁済供託をする
不動産登記法第70条第3項後段に規定されている方法です。この方法を利用するには、以下の条件がそろうことが必要です。
① 先取特権、質権または抵当権に関する登記の抹消申請であること
譲渡担保権や元本確定前の根抵当権などは対象となりません。
② 登記義務者の所在が知れないために共同申請ができないこと
登記義務者(担保権者やその相続人)の住所を調査し、配達証明付きの郵便を送ります。この郵便が、あて先不明ということで返送されて来たら、登記義務者の所在が知れないことの証拠資料として、登記申請の際に添付します。
なお、登記義務者が法人の場合には、登記簿がすでに廃棄されていて何らの登記記録も残っていない場合に「所在不明」とされます。法人自体はもうなくなっていたとしても、閉鎖登記簿等が取得できる場合には、この方法は利用できません。このような場合には、法人の清算人の行方を調査したり裁判所に清算人の選任申立てをしたうえで、共同申請するなり、上記手段1の提訴する方法を採るなりする必要があります。
③ 被担保債権の弁済期から20年を経過したこと
原則として、弁済期を証する情報(金銭消費貸借契約書など)が必要となります。
ただし、昭和39年の不動産登記法改正前は、弁済期が登記事項となっていため、これが閉鎖登記簿から確認できる場合には、閉鎖登記簿を添付します。
添付できる書面がない場合には、債務者の申述書でも良いとされています。
④ ③の期間経過後、債権・利息・損害金の全額に相当する金銭を供託したこと
明治や大正時代に設定された担保権の場合、現在とは貨幣価値が全く違いましたので、債権額が「数十円」などということもあります。この場合でも、現在の価値に換算するわけでなく、当時の債権額をもとに金額を計算しますので、供託金額も少額で済み、この手続きを利用するメリットがあります。
逆に、近年に設定された担保権で債権額が大きく供託金額が高額になってしまう場合には、この手続きは使いづらい面があります。
手段3:債権証書及び完済証書の提出
不動産登記法第70条第3項前段に規定されている方法です。
完済証書の具体的な内容は、被担保債権(元本)と最後の2年分の利息・損害金当の完全な弁済があったことを証する情報となります。こういった書面が手元にある場合には、費用も時間もかけずに手続きできるため良いのですが、実際は、そのような書面を持っているケースは少ないため、この方法が採られることはあまりありません。
この他、供託をする場合と同じく、登記義務者が所在不明である旨の資料も必要となります。
手段4:除権決定をとる
不動産登記法第70条第1項・第2項に規定されている方法です。
登記義務者の所在が知れない場合に、裁判所に公示催告の申立てをして、除権決定を得ることができたら、登記権利者が単独で抹消登記をすることができます。
ただし、この方法を採るにも、被担保債権が消滅していることの資料を用意しなければなりませんし、官報公告の時間もかかるため、この手続きをするケースもほとんどありません。
お見積りについて
当事務所では、休眠担保権の抹消登記手続きを、司法書士報酬 55,000 円(税込)から承っております。
具体的な報酬金額や実費につきましては個々のケースで異なりますので、直接お話を伺って、どの手続きをとるべきか検討したうえでお見積りをご提示いたします。まずは、お気軽にご相談ください。