家の創立に関するもの

【分家】
ある家の家族が、戸主の同意を得て、その属する家を離れて新たに同じ氏の一家を設立すること。または、従前に属した家(本家)に対して、新しく設立した家について指す言葉。分家は、戸籍法上の届出によって成立した。
なお、身分法上実質的な意味をもたない現行法の分籍とは異なる。

【廃絶家再興】
廃家または絶家によって家が一旦消滅したのちに、一定の条件のもとに、その家を再興することが許されており、これを称して廃絶家再興といった。
家を復活させることではあるが、単に廃絶した家の「家名」を称することが認められるにすぎず、家督相続ではないので、廃絶家戸主に財産があったとしても、再興者が相続する権利は認められなかった。
なお、廃絶家再興には、「家族による再興」「戸主による本家再興」「復籍すべき者による実家再興」の3種があった。

【一家創立】
戸主の意思によることなく、法律の規定によって当然に一家が設立されることである。
「子の父母が共にしれないとき」「非嫡出子が父母の家に入ることができないとき」「絶家に家族があるとき」など、10の原因が規定されていた。

家の消滅に関するもの

【廃家】
戸主が他家に入るため、その家を消滅させることであり、戸籍上の届出によって成立した。
廃家をすることができる者は戸主に限られ、戸主の中でも、自由に廃家を行うことができるのは、一家創立によって新たな家を立てたもののみであった。家督相続によって戸主となったものが廃家をできるのは、本家の相続などの一定の理由がある場合で、裁判所の許可を得たときに限られていた。
廃家者が廃家前に持っていた財産は、廃家後も同人の所有に属し、債務もまた廃家者が負担することになっていた。

【絶家】
戸主を失い家督相続が開始したにもかかわらず、家督相続人がいないため、その家が消滅すること。
なお、旧法中に戸主が死亡し、戸籍上絶家により戸籍が抹消されているものについて、新法施行後に戸主名義の財産が発見された場合には、絶家処分は適法になされていなかったことになる。この場合、民法附則第25条第2項により新法を適用して相続人を確定することになり、相続人がなければ、戸主の財産は国庫に帰属することになる。

戸主に関するもの

【戸主権】
「家族構成員の家籍変動に対する同意権」「居所指定権」など、戸主の家族に対する権利のこと。戸主は、家族に対し大きな権限を持つ一方で、家族を扶養する義務を負った。

【隠居】
戸主が、戸籍の届出をすることにより、生前に戸主の地位を退き、戸主権を家督相続人に承継させ、その家の家族となる法律行為のこと。家督相続開始の原因となる。
隠居には、普通隠居(①戸主が満60歳以上、②行為能力のある家督相続人が相続の単純承認をすること が要件)と特別隠居(戸主が病気等のために家政を執れなくなった場合で裁判所の許可を得たとき など)の2種類がある。

【留保財産】
家督相続が発生すると、基本的に、前戸主の財産はすべて家督相続人に承継されることになるが、前戸主の生活消費などのために、所有財産の一部を相続財産から除外し、家督相続させないようにすることができた。なお、この制度が利用できる戸主は、隠居者または入夫婚姻により開始する家督相続での女戸主のみである。

婚姻に関するもの

【入夫婚姻】
女戸主である妻の家に、夫が入る形の婚姻のこと。婚姻後入夫が妻に代わって戸主となるか、妻が引き続き戸主であるかは、当事者が選択できた。

【壻養子縁組】
入夫婚姻と似た制度であるが、入夫婚姻が婚姻のみを目的とするものであることに対し、壻養子縁組は、婚姻とともに、夫と妻の親との縁組をも目的としているという違いがある。

親子関係に関するもの

【嫡母庶子関係】
父が認知した婚姻外の子(旧法下では「庶子」といった)と、父の妻(その庶子の母ではない者。「嫡母」という。)とが同じ家にある場合に、その庶子と父の妻との間に生ずる法定の血族関係のことをいう。庶子と嫡母との間には、実親子と同じ親族関係が発生するが、嫡母の親族と庶子との間には、なんら親族関係は生じない。

【継親子関係】
ある「子」の親の配偶者であって「子」にとっては親ではない者と、その子が家を同じくする場合の、両者の関係のことをいう。継親と継子との間にのみ親子関係が生じ、他の親族とは何らの関係も発生しない。
成立要件としては、①ある子(継子)の親と継親となる者との間に有効な婚姻が成立していること ②継親と継子とが家を同じくすること ③継子は、継親となる者の配偶者の嫡出子または庶子であること(=認知されていない子(私生子)は継子とならない) が挙げられる。

その他

【親族入籍】
他家にいる戸主の親族が、戸主の同意を得てその家の家族になること。下記の「引取入籍」が、引取者の行為によるものである一方、親族入籍は、入籍者(新たに家族になろうとする者)の行為によるものである。

【引取入籍】
婚姻または養子縁組によって他家に入った者が、自分の親族(配偶者や養親の親族でない者)を、戸主や配偶者・養親の同意を得て、婚家または養家の家族すること。

【家女】
生まれた時からその家籍にある女のこと。